◆ インド発祥の多弦胡弓「サーランギー(Sarangi)」類の話題を中心に、世界でここだけ前代未聞の怪研究・珍開発の数々を発信し続ける異常ブログです。同楽器取扱いの急先鋒にして生物学者や変態ケモナーとしても知られる異常造形作家【川崎ピースケが執筆運営しています。
研究テーマ:1)楽器「サーランギー属」、2)海のダンゴムシの仲間「水産等脚目甲殻類」、3)多肉・塊根・平行、栽培から造花まで「珍奇植物」、4)原材料・愛玩対象としての「羊」 、5)獣人表現「ケモナー」 、等を題材としたデザイン論と実践、特に生物型や生物利用の意味について。議題は多岐に渡り、追究の範疇としてエログロを含みます。* 近年(2)〜(5)の構想がだいぶ具現化したので、2023年から(1)の分野に戻りアプローチを再開できる運びとなりました。
★ 1記事内1主題の場合と、1記事上に短文加筆を重ねる【近業掬イ】(きんぎょうすくい)の場合がある。繁忙時はどうしても後者です。
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霧は降る降る釧路の夜に 独り探しの甲殻類よ (2) マリントポスくしろ→釧路市立博物館、の巻



釧路駅前と中心街の空洞化が想像を絶するヤバさとは伺っていたが、

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いやはや、これは…

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人間よりカモメの方が明らかに多い。
ふてぶてしいんだよなあ、カモメっていう鳥は。

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ああ、ふてぶてしい。
トチの実か何か投げてやりたい衝動にかられます。



寂しいことなので逐一指摘はしないが、イオン進出と浸透がだいぶ痛手だな。

御年配には少々しんどい程度の近さ遠さで釧路駅から離れた格好、
かつ、パーセント記号(%)みたいに川を挟んだ配置で、大型イオンが2店舗もあるの。
ありゃ周辺を食い荒らすわさ~。しかしイオン同士では食い合わない絶妙な距離感だ。

マホ充電器ひとつ買う口実で見てきたら、これが盛況なのよ。
皆様のトップバリュ♪ 旨塩しまホッケ(アラスカ産)が安い♪ の文言に、
地元密着リタイア組だろうか、身も心も、車ごと、じゃんじゃん吸い取られていく。



ところで今回どうして釧路取材を決めたかというと、
時々食べてますマルハニチロの鰯缶のラベルを見て、ふと。

f:id:saran-p:20210910192030j:plain 自宅晩メシ

これ旨いよねー、水煮はそのまま鮭缶と真っ向勝負できる味。
汁もスープのようにして飲めます、ほんと。
味付の方はしっかり味なので呑んべえ様向き。

こうして便利で呑気な賞味が好きな時に叶うのは、
寒さこらえて獲って切って詰めて送って売ってくれる釧路の人があるからだ。
沖に群れとった鰯も缶に詰まって旅してきたから今ここにある。
今度は俺が船に缶詰になって、鰯の故郷へ降り立ってもいいじゃないか。

生まれも育ちも南TOKIO、港に出るならハマにスカ、
父は築地でマグロの卸(一時期ですが)、その倅、つまり純・都会ッ狸の私めは、
潮香る霧と魚の街並みを頭では夢想し、日頃その恩恵を授かっておきながら、
北の漁場の実像たるものをろくすっぽ知らねえまま生きてしまった。
海を愛し、産物を愛す時、哀愁と妖艶の、はるか釧路… って知らんくせにね。


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それが今や漁業も不振、 夕張一直線?! とは、おいおいどうした帝國大日本?!
買い支えろ! 喰い支えろ!

しかるになんぞや若人め… やれパクチーそれカルダモンと、
ターメリックなナンプラーやら、グラブジャムンなマッサマンやらが大挙しては、
サーランギーで国際理解〜♪ などと我らが食卓をクミン顔でプーパッポンしておる始末。
テメェらはせいぜい鼻にヒーング詰め込んで眠るがよろしいのである。


そこで気鋭の慧眼がお馴染み大評判のこの俺ッチ(親指!)こと磯のプチ虫大公爵が、
観光客にも地元民にもパッとしねえが応援したい実力ピカイチ優良スポット群像を直々に、
貴殿らダッフンダに延々と講釈たれ候。押し頂くように次回旅情の参考とされよ。
きてね!




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くしろ水産センター = マリン・トポスくしろ
釧路に来ておいて此処を訪れぬ者は “腐る” といわれています。

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見たこともねえ珍装置、何の理由で俺も持ってんだか俺も知らない怪漁具など、
古めかしいお役所テイストはご愛嬌、なかなか楽しめて勉強になる。

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海洋大の宮澤准教授もギョーギョーむせび泣くこと必至の貴重な逸品がぞろり。
思えば、おさかな好き少年、釣り好き少年、船好き少年はしばしば見かけるが、
漁具好き少年を知らんなあ。見込まれて中卒すぐ親父の後継ぎを確定だからか?

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缶詰の鰯たちが運ばれたであろう、超・鬼デカたも網。
これ、こうして単に飾るだけでもよいのだけれど、
来館者をすっぽり掬って見える角度もしくはダミーを提案してくれたら、
その巨大さを物語るすばらしい記念撮影スポットになると思う。

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釣り具の上州屋・マリントポスくしろ店が堂々オープン! 全品10%OFF!!

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タマクダキ。固くしまったタマを、優しく、ときに激しくほぐします。
全国の気ィ立った子連れチャリ奥さん(右側爆逆走)は、
ハァ?! 何で気付けないわけッ?! と叱責しながら甲斐性なし旦那のタマを玉と砕けよ。

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/ギルガメッシュ!\

レッパンちゃんも突如メンバー加入を宣言せし、魅惑のマリンレジャー啓蒙ポスター。
安全の為にライフジャケット着用とスマホの防水を必ずネ♪と説いては、
しかしこんなミニスカで波間に立つなんて流石の気概や海のアイドル3人衆。

あっ! 足元の岩場では、老齢の定着性水産動物(たこ・なまこ等)が大漁に群泳し、
うら若き種苗(ひじき・あわび等)を隙間に見届けんと、年甲斐もなくついホッキ!(刺し網漁法)
番屋の女房に内緒の密漁は罰金3000万円です!(漁業法第138条)

f:id:saran-p:20210819120421j:plain< オラオラーッ!!

結果としてどす黒いエゾアワビ3枚を目視、
発奮してウュンウュンと変節ダイヤルを変節するレッパン密漁長。
おかげであちこちの変節が変節したことは申すまでもござんせん。元に戻しなさい!


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シーシェパードが白目むいてシェパシェパ喚き散らすこと必至の捕鯨文化推進コーナー
釧路ではつい先日もミンククジラの水揚げがありました。ミンキーモモ!

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乱獲せず・恵みに感謝し・大切に使い尽くし・慰霊を欠かさぬことを前提なら、
私も海獣利用に賛成します。なけなしの島国の生きる支えに他所が何言うものぞ。
ただし和歌山の血みどろ追い込み漁、あれだけもう少しどうにかならぬかなぁとは思う。
ウェルフェアに則った、スッと眠るような無血屠獣技術が編み出されないものかしら。

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呼び物の巨大くじらパネルとともに来館記念撮影。
こうして並ぶとくまおくんの巨大さがとてもよくわかりますね!

f:id:saran-p:20210819120605j:plain 等倍でこれ

元画像を無理に7mまで引き伸ばしたものだからドット絵化しているのが微笑ましい。


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ツートト、ツートト… くじらパネルのあまりのドットの粗さゆえか、
やにわに謎めいたエレクトロ怪電波を発信、全米が感銘の渦に包まれたエニグマお。
このモールスは嬉しや実動展示につき、しばしクラフトワークごっこを楽しむことに。
暗号は作戦中のドイツ艦隊へ直結です。ダカラ・ケトーワ・イヤナンダ…

かの名機TR-808を彷彿させるくまおの正確無比なグルーヴは北の漁場を駆け巡り、

市役所の皆さんも退屈なルーティンワークをスッ放り出して、
電卓片手に怪ステップを踏み始めました。ポックンワ・オンガッ・カ…


おそらく元来はお役所ゴリゴリの港役場であるところに一般向け資料室を設え、
だったら上には展望階、下階に漁師さんも利用の大衆食堂をと、
ちょっと不思議な複合施設ではある。

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真っ先に来る旅人は少なかろうし、入っていいのか躊躇する佇まいかもしれないが、
各位ぜひ突撃のうえ、地味~な役所仕事の采配あってこそ海の幸あり、と思い馳せるべし。

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おぬしも一度は来て見てたもれ!


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マリントポスから市立博物館まで徒歩で余裕~と意気込んだが思いのほか有酸素。

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春採(はるとり)湖畔、サンクチュアリに爽やかな風そよぐ。
我が地元「洗足池」そっくり! わざわざ来て、洗足池、ときめき♪

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あっ、さっそく北国ならではの野鳥を発見!と勇んで凝視するや、

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腐った杭でした。
こういうところにも北海道民の底意地の悪さがヌメヌメと滲み出ていますね。
東京モンだば思ぅてバガにすンでねぇど!
おらが村の洗足池の鴨ッコば日本一だズセ!



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さまよえる湖に忽然と現る砂の楼閣…といった雰囲気で佇むは、釧路市立博物館
釧路に訪れておいてここに来ない者は “漏らす” とさえ伝えられています。

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うーんいいですね、展示敷地のさほど広くなさと、資料の雑多さが相まって、

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なかなかに濃厚ガラクタリスティックな螺旋階段ヴンダーカンマー。

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こちらも幾つかは何の理由でか俺も似た物を所有しており、つい親しみがわきます。


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さかまく波とひらめく空に打ちのめされて冒険を打ち切り、
けれど夕日はお前と仲間の髑髏をうつす、ガンバの剥製標本。
ショーケースの幅が回転寿司のコンベア幅と概ね同じなのが異様な想像を刺激します。
1匹ずつシャリに乗って流れていくのを眺めたいものですね。
ちくしょうノロイの奴〜!(野沢雅子の声で)。

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オリジナルガチャポンに嬉々と挑戦するも、景品は丸まった藻の塊でした。
汚いなあ!せっかくならツルとかクマとか北海道らしいオマケをさぁ。
つくづく道民は性格が悪い!

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龍馬ならきっとこう言っただろう…と勝手な妄想を繰り広げるのと同じ心持ちで、
大昔のクジラはこうだっただろう…と妄想したもの。
絵のタッチから察するに、あんたヒエロニムス・ボッスの宗教画ん中にいなかったか?
鯨が現代も尚この姿を保っていたら、果たして捕鯨していただろうか、と少し思いました。



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上階は釧路の中近代、山海開拓の歴史を物語るドチャクソ古道具コーナー。
俺の部屋もこんなふうにレイアウトしたい!

古い道具の造形にCADだの3Dプリントだのには出せない味が宿るのは、
やっぱり「手」の介入が色濃いか否かなんだろうよな、
使い込まれ、手垢にまみれ、握りはすり減って。

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ネットと端末で何でも叶う楽チン世代にようけようけ学んで戴きたいものですね!
昔ぁディズニーワンデー1枚買うのだって鋸を挽くところから始めたもんじゃで。

中でも今回とりわけにグッときたのがこちら、

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林業に欠かせぬ、ひときわに美しい開拓の供「がんた」
魅力的だねえ、好敵手は鰻掻き(うなぎかき)といったところか。1本買おうかな?

丸太に噛ませて回したり、転じて、切断まで仮に支えたりする大道具です。
木廻し、角返し、舶来語では商品名も相まってフェリングレバー、ブレーキングバー、
ログジャック、ティンバージャック、ピービー、カントフック、カントドッグと、
現場や仕様によってクソ適当に呼ばれ、正式名なんざ誰も知らん道具でもあります。

実のところ、別段珍しいものでなければ釧路独自というわけでもない。
どころか、同じものは各地の林野業向け工具卸で販売しています。
当時の持ち主もきっと、コッ、こりを博物館にかぇ?と呆れて笑うことだろう。

が、否、こういう何でもない道具をこそ揚々と掲げ、歴史に想いを馳せましょうぞ。
使うため、ただひたすらに使うため、用を極めて研ぎ澄まされた道具には、
余計な意匠を装う隙のない無為の美が宿ります。柳宗理もにっこり!

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麦わら狸の一味こと俺様も日頃愛用の「川崎船(かわさきぶね)」
小回りが効きますからちょっとコンビニ寄るのにも便利。
カスタム軽トラもいいけれど、川崎船もどうぞご検討ください。



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さらに上階には、釧路アイヌの暮らしを彩る道具立てが所狭しと。

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うーん、生活に根ざした自然素材の道具はやっぱり魅惑的だ。
こういうのが本来の意味におけるアノニマスデザインなんだがなあ。
近代デザイン屋ときたら白くシンプルにすりゃアノニマせると思うとるもんし、
でなきゃミニ四駆みたいにガッゴギガッゴギせんことには不安なのかしら。
ルイジコラーニのモッコリモッコリも大概ですけれどもね。


一方で注目すべきは、どう見てもアジアンアクセサリーの類や、
どう見ても本州以南の技術である鉄器や漆器の類を、大切に受け入れていた
こと。

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宝物を持っていて、しかし自分たちでは加工技術をもたないということは、
他地域と盛んに交流していた以外にありえないわけ。
みんなが印象するような、断絶と虐殺に揺れる原始文化ばかりでは必ずしもなかったのだ。

やれ、粗野で神秘的で土臭く朴訥としたエキゾチズムを辺境文化に求めたい心には、
そう説かれると急速に萎えるだろ? そこが民俗学愛好の却って盲点だと思う。
そしてまた、虐げられし先住民の憐れを日本低国民は永劫に懺悔せよ屈服せよ…
といったストーリー展開にとってもこういう史実は都合が悪い。
一面的な解釈を鵜呑みにせず、物に宿る真の芯を見破れるかどうかだよね。


トンコリもその類のものではないかと思うんだ。

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どう見たって他所から入ってきた棹型弦楽器の系譜じゃんかよ、これは。
弦を押さえて長短を変える使用法が放棄されて、
開放ツィター式に扱われることに定まっていったとしか考えられない。
でなきゃ糸巻きに大仰なヘッド意匠が遺っている説明がつかないじゃないか。

そういう変遷を遂げた弦楽器は他域にも幾つか存在しますし、
既存奏法に沿わずオレ流おらが村流宣言なんて昔からみんなやってんだし。
だとしてもこれ、下駒の挟み位置はもっと下、へそ穴より下だよな、普通。


とは、以前、トンコリアイヌ独自発祥と解説なさる向きに少々申し上げ、
ぶつくさフテ腐れられたことがあります。
二言目には、差別、弾圧と。

正しい伝統・正しい理解・正しい反省… ええ、ええ、
そういった概念をいっぺん取り払って、モノそのものをぎゅっと見て、
モノそのものとよくよく対話してみてください。

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いかがでしょう、

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こんなん夏休みの自由研究に作れそうだと思わない?

実際トンコリを自作して楽しんでいる方が大勢おいでなのは、
改良の余地と許しをこの楽器の造形そのものが留めていることによって、
これなら作れそうだしカッコいいじゃん!と思わせるからです。

せっかく自分で作るからには何かしらオリジナリティを込めたくなるのが人情。
そうした心が新たなモデルや様式を現世に生み出す原動力になっている。
当時のアイヌの民だって、他域の楽器を見て触れて、きっとそう思ったはずなんだ。

情報の変遷、連綿、集積、実体的現出、端的にはパクリ&我が家の味、
これこそが民族楽器の豊かなバラエティの源にして真の姿なんですけどね。
うち「日本に流入せしサーランギー属がいかなる変化を遂げるか?」研究における、
急先鋒にして超本命にして世界一が私ですがなにか。


ところがその日本を含め、楽器の手習い師範各位というのは得てして、
‘正しさ’ ばかりを手っ取り早く表層に装ってみせ、
手っ取り早く褒めさせよう・守らせよう・敬わせようとするが、
その根拠の脆さゆえに頑なさを生み、ついには手っ取り早い嘘を生む

このとき、絶対的説得性を頭ごなしに言い張る目的から、
しばしば “先祖” やら “神”を引っ張り出してくるではないですか。
死人に口無し、見え透いたご都合ファンタジィさえ御座れ放題。


色々な角度から学問してきて最近ようやく気が付いたのですが、
史実と空想、実と虚を、きちんと分けて遊ぶ ‘村’ と、ごっちゃにする ‘村’ があるのな。
それは自己のアイデンティティをはかる弱みにも、しかし強みにもなり、
ひいては相手の弱みを攻撃する材料にさえなり得るんだよ。
陥らぬようよくよく注意して社会活動に取り組まねばならない。

しからばオイラもひとつホラ吹いて、

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「弾圧に耐えた神話的少数民ピスケイ人の末裔にして最後のサーランポコ奏者である私に、
 どうぞ猛省と憐憫と当然補助金を…。ぬっ、ピスケイ人差別をなさるおつもりか? 
 先祖の霊の、山海の神の、怒りを買うであろう…!」

などと、さし指プルプル凄みつつ1軒1軒に門付けてみましょうかの。
皆様のお財布はどこまで承服できますかしら。

…なるか?って話。
楽器という極めて不定形不安定な物質文化を学ぶうえでは、
他者のありようを大切に思う一方、冷静さと客観性を逸してはいけないね。
あまりに頑固な現状維持に溺れ、或いは民族自決のアイコンの如く、
奏法の正誤云々を事細かに睨みつけ譲らぬような態度はもたないほうがよい。
そういう態度のほうがよほど相手の自由な発展を踏みにじる差別弾圧になり兼ねんぞって話。


f:id:saran-p:20210822073831j:plain 釧路駅前)

ああそうとも。きみがその持ち方で弾きたいというなら、それでいいんだ。

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そうやって弾くことが最高に楽しく、自分らしく、何よりの喜びなら。



あっそうだ、この箆のような札のような不思議な祭具、

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「イクパスイ」にも触れておかねば。

語弊を承知で申すならば、さ… 神様どうぞ一杯… の相伴ごあいさつ専用箸。
先端を供物に浸して火に振りかけ、儀礼的に取り回して神に意を捧げるそうです。
物によっては都度、神火に焚べてしまうので、都度作るというんだ。

食器のようで食器でない、神と人の仲立ち=インターフェースとしての木製カトラリー
実生活に必ずしも必需ではないモノをわざわざ作り必需的に扱う。
そうして超自然と対話し繋がりたい心にこの道具の存在意義が生じるのだろう。
“食卓護摩木” とでも理解すべきか、興味深いわいやぁ。暮らしと祈りは共にあるのだ。

そういえばハリーポッター君と教室のお友達もみんな菜箸の片っぽ持って、
エイっ、ヤーっ、しきりに突き出していたな、あれと一緒か。

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ともあれ、今回の釧路レポートには、トンコリ、イクパスイ、
そして後日登場するムシが効いてくるので憶えておいてくれい。
この為にわざわざ自分で見に行って採って帰ってきたようなもんだから。



北海道を舞台に頓狂な描写で人気の金塊冒険漫画「ゴールデンラッキー」f:id:saran-p:20210913143853j:plainの影響か、
このところ再びの盛り上がりをみせているアイヌ文化学習。
あちこちでキャンペーンやらコラボレーションを見かけるようになりましたね。

ほら、このようにホテルの備品の裏側にさえも伝統文様が…

f:id:saran-p:20210819001734j:plain  …違うか。

しかしま~その、申し上げづらいところも多分にございますながら、
当該コンテンツについては様々なお立場からのご意見を伺っております。

例えばウポポイ、及びウポポイ、或いはウポポイについて、様々にね。
お人好し民族の土地や文化がいかに知らぬ間に、
渡来人の侵略を許しているかを現在進行形で実演中と評判の、
窮民革命象徴空間ウポポイの、展示内容ですとか、新築の意義ですとか。

過去を振り返りながら共に理解し親しみ合える関係を目指すこと(共生)と、
永遠にひれ伏せ永劫に甘い汁を吸わせろと弱みを口実にゴリ押すこと(強制)とは違うぞと、
きっぱり撥ね付けられる気骨を持つことさえ憚られてきましたもんね、我々は。
とりわけ、分断の本懐を隠して煽動し、弱者を先兵として使い捨てたい向きには…

f:id:saran-p:20210819001720j:plain ようこそ、で充分嬉しい。いちいち押し付け、いらんからって。

で、行ったのかって?
あいにく苫小牧から釧路への道程にウポポイ行きは正反対なもので。
奇しくも地図上の、そちらは左側私は右側にご用事でね。OK印!


釧路市立博物館は、北海道を多角的に彩る現物資料がウポポイより豊富で、
創作ダンス、体験学習、アイヌ語変換といった過剰なお仕着せはありません。

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興味津々の方はじっくり閲覧でき存分に想いを馳せられましょうし、
無理してまで異文化に親しむ気持ちはない方にもおすすめです。ぜひ訪れてみてください。

f:id:saran-p:20210819142525j:plain うさちゃんも待ってるぜ




さあ、帰って夜間ムシ採集の準備をっ…と、おおっ。

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突如として眷属さまのご到来
地元博物館のこんなすぐ脇でお目にかかれるとは。
こりゃ大洗での稲荷参拝が効いたな。

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夏毛につきほっそりして見えるが、
狐というのはいつ見てもFOXYな獣よね。

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このあとお互いモッフンモッフンのベロンベロンにペッティングして、
全身を多包条虫の卵にまみれたまま帰京してのけました。
キミんちのワンちゃん貸せよ!一緒にベロンベロン遊ぼう!


…嘘、嘘、遠巻きにそっと見守る程度だわいや。
先方もまるで意に介さずスッタスッタお出掛けになったですよ。

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今、ダメダメッ野生のキタキツネには危険な…と取り乱した方、見込みあるぞ。
ご心配、ありがとう。そして、ばかやろう。
慶応寄生虫学の道を捨てて武蔵美工業デザイン現役じゃ申しちょろうがもん。
エキノコックスについては、1)南下しとるぞ、2)ゲノムはまだか、
3)ヒト用ドロン早く作れ、
まで存じ上げてますのでそっから話しようや。

ただ偶蹄家畜の体内にも単包型の同属がわりあい普通にいるそうで、
そいつぁーまーったく無頓着でした、テヘペロ♪
駆虫薬で散ってなきゃ俺の体内にはもう潜伏してっかもしらん。
羊とは本当にベロベロチュッチュのダッフンフンに乳繰り合いますさかい、
そしたら自業自得だわな、潜伏期も随分長いと伺います。





釧路ルポルタージュはまだ続きます。
寄らねばなるまい寄ってきたスポットがまだまだございますのだ。
不況の折、地元の産業がどう侵攻と向き合いどう立ち向かってるか。

さ、明日も早いし、疲れちゃいられない。
膝を丸めて泥のように眠りました。

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いつ醒めるともしれない眠りの底に…
ざっと1万年後の、朝5時起き。








    サ ー ラ ン ギ ー 図 鑑     

★バイオリンは皆さんご存じのあの形状にほぼ定まっています。しかしサーランギーは製作者・時代・地方によって様々な自由形が存在し、今なお進化を続けています。特に弦数や配線は個体によって全くまちまち。これは、先人に学んでこう作らなければならない・本場の本家本元ではこれが正しい・こうでなければ本物の価値が無い、といった固定概念に縛られていないためです。ひとくちに捉えられないそれらをサーランピーでは「サーランギー属」と総称しています。

こうして並べますといかにもアジア諸国調査で得られた現地サンプルに見えますが、なんと殆どが日本国内で発掘されたものです。日本人の技術で修理を施しました。…そう言われると急に萎えますでしょう? みんな興味本位で取り寄せて結局すぐ手放しちゃうからこういうことになるのです。

しかもこの中には当方が捏造したオリジナル楽器をまことしやかにねじ込んであります。果たしてどれが現地の風薫る本家本物のお宝で、どれが世にもいかがわしい贋作か? 鑑定やいかに?…といったこだわりは、どうにでもなることですし、実のところどうでもよろしいことなのかもしれません。



チーペスト号  名古屋の誰だ号  結局ウチに号  

ボロ号  55号  黄泉号

グランピエ号 ジョギヤ 前方後円ジョギヤ 

カリマンタン号 恵さんでしたか号 そそるスリム号 

ドードゥロバナム ドゥカン号 サランガ

サランガ・ペタンコ エレクトリック チカーラー

チカーラー(近代版) サローズ アフガンサリンダ

ネパリ くさっぱら号 さらん弓(さらんきゅう)

サランダ  擦弦仮面 ダルマサンガ サランダ

ディルルバ エスラジ タール シェナイ

エスラマ ベラバハール カマイチャ

ラーヴァナハッタ ペナ エスラール
プールヴィーナ バリアジアン号 サラウドン
ストゥーパ号 ドドバシキメラ





    文 化 へ の 冒 涜 で は ?     


サーランギーの化石(カンブリア期)


いいえ、全く冒涜にはあたりません。サーランギー属は進化を歓迎し、地域毎に異なる展開を許す楽器群です

民族学・民俗学では、創作の混入は許されず、ありのままを正確にサンプリングすることで解明に努め、敬意を払います。つまり研究者はあくまで傍観者、せいぜい中途参加者であって、真の当事者にはなれません。研究者が自ら文化に手を加え、研究対象を自分自身とし、文化の歴史を塗り替える、これが許されるなら何だってやりたい放題になってしまいます。そのため研究者は、専門性・正確性への拘りにばかりにプライドを置き、しかし自分では大した表現が出来ない、融通の効かない方向へと人格形成されがちです。異文化理解を唱える本人が無理解とは皮肉なもの。サーランピーではこの状態を「スウェーデンポルノ女優のスリーサイズを精緻に暗記した童貞」と呼び、陥らぬよう自戒しています。

だども、オラ、この楽器がこの島でどう進化すんだか夢みちょる真ッ当事者の日本民族だで。何をどう作ろうと直そうとオラほの自由だ。オラが村の遊びがまんまこの楽器の進化の歴史になるだ。「インチキ業者」「思い上がるな」「現地の文化に失礼」「1人で騒いでるだけ」とお感じなのは、ひとえに貴方の心が許さないから。なにせその現地をはじめ世界各国からウチ宛てに「サイトを見た。修理はできるか? オリジナル楽器のオーダーは可能か?」と打診が来ます。もちろん断りますよ。てめーでやれっ。もしくはてめーの村の良さでやってみれっ。…そうすることがいつしか文化となるのだから。