◆ インド発祥の多弦胡弓「サーランギー(Sarangi)」類の話題を中心に、世界でここだけ前代未聞の怪研究・珍開発の数々を発信し続ける異常ブログです。同楽器取扱いの急先鋒にして生物学者や変態ケモナーとしても知られる異常造形作家【川崎ピースケが執筆運営しています。
研究テーマ:1)楽器「サーランギー属」、2)海のダンゴムシの仲間「水産等脚目甲殻類」、3)多肉・塊根・平行、栽培から造花まで「珍奇植物」、4)原材料・愛玩対象としての「羊」 、5)獣人表現「ケモナー」 、等を題材としたデザイン論と実践、特に生物型や生物利用の意味について。議題は多岐に渡り、追究の範疇としてエログロを含みます。* 近年(2)〜(5)の構想がだいぶ具現化したので、2023年から(1)の分野に戻りアプローチを再開できる運びとなりました。
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食べればサランギ!! 平野レミの♪ 家庭で出来ちゃう創作レシピおったて鯛♪「アルダッロ・ツクーリァ」(1) 序の巻

【今度の話題、長くなるので幾回かに分けることにしました。今回は ‘序’ です。】



そりゃ剥がれるわ、

部分剥がれを両面テープでどうにか留めようとしている前オーナー。
弦1本のグスレやからどうにかなってたのかしら。
伝統的な木釘留めでもいいけどこれはテンションかけて接着しなきゃダメよ。
仕上げに木釘も打って、効いてないけど木釘で留めてるふう〜を装って飾るのがベストやね。

この4月は怒涛の楽器修理&整備ラッシュです。
冬の間の鉢植え置き場がたちまちガラクタまみれに!
皮張り弦楽器たちが皮を新調してもらうのを待っています。

なになに、楽器の道を捨てて変な方向に行った奴、だって?!
っはっはっは、全く捨ててねえし、己のやりたい成すべき事を好機に為すまでだ。
私の人生は他人が勝手に決めることじゃあねい。


脱がせた古い皮は、

他の楽器にまだまだ移植できるので適宜保管しています。
張り終えて切り飛ばした余剰分や小片だって、力が掛かる箇所のあて皮になる。

戦歴の数々。カツオブシムシぽちぽち。
こういうの丸ごとゴミ箱ポイする皮張り楽器関係者は、くたばれ。
皮張り、皮張り、訳知り顔で仰るけどもやあ、簡単に言ってくれるなよ。

ヤギの惨殺死体の皮膚であることを忘れちゃいかん。ポイ捨てちゃヤギさんに申し訳が立たんのだわ。

ペット同様に愛情をもって大切に扱って頂きたいものですね。
ああ、真似すんのはいいけど、間違ってもイスラム圏の楽器に豚皮を張るなよ、謝って済まないぞ。


現地工房で見た知った程度でなく、皮の道理をご自身でよくよく解ったうえで、
ご自身できちんと張って弾いてるインドサーランギー奏者さん、残念ながらお目にかかったことないな。
楽器屋に命じる立場だから奏者は無学で構わない、のかしら? うーん。
それじゃなんぼディベート流暢でもママンに靴下履かせてもらってるボクちゃまクンと一緒やんな。

だのに奏者さんには何故か、ええもちろん専門家ですから製作面も熟知!とご自負のところがある。
やっぱり自分でうまく張れなくてピースケにご依頼の方ちらほら。
あんなの ‘貼’ るだけでしょ? と、ああ ‘張’ ったことないんだろうなって方や、
明らかに勉強不足で失敗したのをユニークな張り方になりましたと苦しい言い訳してる方も。


民族楽器演奏家が最も恐れているのは己のインチキを見破られることです。
やってみて失敗した経験は糧になるけれど、未熟を素直に受け入れられないプライドから、
知ったかぶったり取り繕ったりするのは端から見ていてじつに格好が悪い。
門外不出の職人技!ってほど難解なものでないし、どんどん挑戦してみたらいいはずだが、
演奏の鍛錬だけでは得られない知見の積み重ねを軽んじちゃいかんわな。

どんな楽器に何の皮のどの部分を、どんな道具立てでどんな方向にどう張れば、
どんな音になり、かつ長持ちするか、色々あるわけよサーランギーに限った話ではなく。
そして ‘数’ を安定的にこなすにはどうするかだ。1台2台張れたからって職人気取りはみっともない。

なにせ楽器取り扱い全体で大切なのは ‘構造と力とその予見’
実務からルックスに至り、その形状は何のためにそう作られる必要があるのか?を考える作業だ。
この点では他の楽器の製作ご専門さんの方がずっと謙虚でいらした。手技ノウハウ豊富なはずだのに、
インド楽器の場合は何のどこを? どう張ってらっしゃる? 治具は? 仕入れは何処?等々、
三味線や三線の職人さんに尋ねられたことも幾度かありました。



おお、ごめんごめん、

動画配信に関しては完全にスッ放ってましたわ。
だって今まさにネタの楽器を整備しとるのだもん、済んだらね。

すっかり滞ったのは、ここ10年の内にあまりに誰も彼もが動画投稿に参入、
テレビ的ノリや解説にコリ過ぎてて、だのに1動画を30秒も観ずに次々ザップしちゃうでしょ?
動画投稿というツールに遊ばれてる気がするのだ。道具を遊んでいかないと。

それと、有益な情報さえも検閲し封殺してしまう胴元の態度への疑問視です。
別の動画サイトに引越しを検討しとるうちに生物方面が超多忙になり、動画どころでなくなっちった。
再生数やら登録数はどうでもいいけど、映像作りとしては改めて考えなきゃいけないなと思ったの。



じゃ今回からがっつりサーランギーとその周辺の話をする。
縁あって先日迎えた弦楽器をご覧に入れながら、
いかに皆さんが部分的・一面的ばかりにしか楽器なるものを捉えていないか、
ひいては、創作と追従とはいったい何処に在るものか?という根元の問いを、
毎度おなじみ何サマ丸出しペスタロッチ式実物教授にて、数回に分けてブちカマしたく存じます。


まずはコレ↓だな。
さて、民族楽器にはちょいと詳しいゼと訳知り顔&腕組み豪語の貴方、
おうよ構わんさ、てぇしたもんだ、ならば堂々お答え戴こう。

この楽器の名称と正式な演奏法を正確にお答えください。

 ・
 ・
 ・( ・・・・・・・・。 )
 ・
 ・
っはっはっは、即答あぐねてす~ぐ検索をあたるキミは、ばかやろう。
ネットには正解がタダで転がっててパクればたちまち一流解説者になれると思っとるなよ?
検索エンジンという道具に遊ばれてちゃいかんな。


【正解】は、俺も知らん。あのね、こういうのはどこの国もヘッタクレも、
作った本人にどういうつもりを伺わないことには分かんないんですよ。

ネパール土産とのこと。木質や施工のセオリーからみて確かにネパール国産品と捉えてよいとは思う。
あちらといえば辻芸が有名ですね。温かさに親しみ現地で学んだ愛好家も多いですし、
知る方ならこの素朴な風合いを一見すれば即ネパールやんけとお感じと察します。

問題は形です。くそダs……いえ、湯にぃ~く…ですヨね、とっても!
典型であるサリンダ型くびれ胴のデザインは作家によって若干変容するものの、
だからってこのポッカリ開口はなにか。音響的には大して変わらないがルックスは大違い。

そして異様にデカくて重い。どういうつもりや?
てっきり汎用モデルと同等の手頃な全長40cm程度かと取り寄せてみてびっくり。
ふざけた超特大サランギも博物館には有りますけど、この形でこの大きさ、どう弾けというのか。
携えて行商もしんどいだろうし旅客だって荷物だろうし。よう運んだで。

この製作者はもう少し胴の内厚を攻めてくれたらよかったな、
あと1cm深く彫ればもっと軽く扱いやすくなったはずだ。
ブリッヂは元より逸失していました。残ってたら操作がずいぶん判明したのに。

サンタル人のバナム類↑によく似た構造、ひいてはキルギスのコビズ系統までも想起させる。
ネパール近隣のどっかしらプラデシュ由来の造形か?と仮説できなくもなかろう。
陸続きの文化造形は互いにうっすら繋がっているのでうかつに県境で分けられません。
まるきり外国人が見よう見まねで作った品物?も時には出るのですが、今回は考え難いな。

相互に酷似するサランギ属及びサリンダ属各種との共通項をあたってみましたが、
これだ!っていう類例にあてはまらないんですよね今のところ。
やっぱネパールサランギ作家単独による単発的な創作かなあ…と思います。
ポイントはネックを貫く肩掛けor立奏用ヒモ穴↓の踏襲です。

この位置にこういう細工をするのはネパールサランギらしいセオリー。


かつ、ネック上からヘッド飾りまでの妙〜に撥弦楽器寄りな解釈も気になる。

すぐさま連想したのはヒマラヤ山系の皮張り撥弦楽器、トゥングナ、ダムニェン、ドラニェンの類、
雲南にかけてのスンだかピワンだか名前よう知らん、三味線の先祖の血筋っぽい頭よな。
バーブ系統の多くは弓奏だった頃のセオリーや撥弦への変遷をだいぶ遺した形態をしていますが、
世界各地に広く伝わり、その過程でずいぶん多様な変化を経てしまっているようで、
外観や奏法だけでは確かな由来を断定できなくなっています。

ですので、まさかよもや横に構えて撥弦仕様にも転用?の可能性も検討しましたが、

ま、これはこれで……うーん今回は違うかなぁ~。
楽器自体にその過去をあまり感じ取れませんし、やっぱり立てて擦弦だね。
指板が全く傷んでいないのをみるにやはりネパールサランギ式、
弦を中空に浮かせて張って爪か指先で軽く触れる奏法になるかな。
全く錆びていない鉄弦はおそらく前オーナーが仮に張ったギター用とみた。

どころか、弦通し痕・ペグ回し痕・弓通り痕などの使用痕跡があまりに少な過ぎるのだ。
正しい使い方以前に演奏経験を殆ど積んでいない吊るされ飾られまんま個体と推測されました。
使い込まれてきた品物ならばこうまで製作当初の状態を新しく保たないはずです。

特にペグ軸よ。この作家は端まで同径の棒状に作ればよいものと考えて作っており、
穴径の摩擦力だけで弦を留めようとしてっからキツく打ち込みすぎてて抜けねぇの回らねぇの。

かと思うや、緩っ…。軸径が穴径よりストレートに小さく、ペグの頭ッ首が浸かる位置まで、
スコーンと向こうに潜っちゃう個体も。これじゃペグの意味を為してねえやい。
軸と穴に若干のテーパを付ける構造の意味と重要性がまるっきり分かってない。

トサカ正面に空けられた謎の2つ穴も気になります。

朴訥な界隈では熱した鉄棒の先をジューーッと木面に押し当ててペグ穴を空ける。
これはその棒の先でジュワッジュワッと、おそらくはこれで ‘目’ を表現、
仏塔と同じく? もしくは霊的生命を宿すべく? 開眼を表現したものかと考えられるですが、
それにしちゃ気合を欠くっちゅうか正中からズレてだいぶ適当に空けられていることから察するに、
たぶんここ、作りながら思いつきでやっただろー。ここに目を空けてやろうジュ~って。



総じて、うーむこんなパターンの作り方もあるのやもしれないがこりゃアレだね…
想像するにおそらく、まずちょうどこの寸法で採れる丸太材があったわけよ。
通例のサランギにはちょっとデカ長いし、棹モノ撥弦にするはちょっと太短い無垢材が。
そんなとき芸術家のサガというのはいつだって、ちょっとセオリーからズレたものを作りたくなる

かくして目一杯フルサイズかつイレギュラーな形状に彫ってみたのを、

     \ 買わんか? ホレこーゆー変わり種もあるでヨ /

と旅客にフッかけて、工房先か路肩の露店で売って流れた、
いわば規格外扱い・オブジェになりがち個体じゃねーかな?
佇まいをみるにどうもそんな匂いがするのだが、どうだろう。

つまり、たぶん作った張本人もこの楽器のスペックをよう知らん。
そういうの沢山あるのよ楽器って。全てがキレイに図鑑辞典に片付けられるわけではない。
何か違うパターンでデザインしてやろうとしている職人の気概は語ってくるが、
ワシが心を込めて彫ったので大切に弾き込んでおくれ!の願いが今ひとつ伝わってこないのだ。
道具のセオリーに遊ばれることなく製作行為そのものを遊んでる品物に、俺には見えました。


ま、ホントにそんなんなら、なおのこと俺も知らん。現場で見た聞いたわけでねえもんし。
或いはこの形状を通例や特長にしている地域や作家の情報を勉強不足で掴めてないだけかもしれない。
動画サイト等に確かな手掛かりがヒョコッと出るかもしらんので、そしたらそのとき正直にね。

一方で大切なのは、謎ながらも形が語ってくるヒントを読み取り・読み解き・先を考える作業だ。
なまじフィールドワークで発掘したのでは俺の取材の賜物ぞ!のプライドが前面に出ちまう。
作れば存在しちゃう品物についてはもう我々は謎を謎がるより致し方がないわけ。

いかにせよこの筐体なら弦まわりを仕立て直せば充分に楽しめる品物へ化けますよ。
ペグを弱い平ツマミ頭でなくコケシ頭か長型にすれば強度と迫力が出るはずです。
ガットか毛束の弦を2本張ってコビズと見紛う仕様を楽しむなんてのも一興かな。
胴のトカゲ皮は既に破けてしまってたので別の物に張り替えて、
剥いだのは鼓面のもっと小さい別個体に移植してあげよっかな。

…ぁに? あんだって???

現状を正確に保存すべき?
日本人が勝手な解釈で手を加えたら正確な現地資料としての価値を失う?
正しく理解し正しく実践することなくして正しい民族音楽の姿勢とはいえない?

るせーーッ!!
ご自身で弾けて直せて創れてから文句言ったんさい。
そのうえで、ままを保つべき稀少品か、そうでもないかを、どれだけ見分け使い分けられるかっつの。
それともナニか、俺の着てるTシャツに文句でもあるってぇのか?!
雌ダック先生の可愛いTシャツを自分で作って着て悪いってのかよっ!

もともと遊んでるデザインの道具が再び歌う日を待ってるんだから叶えてやるのが本望なんだよ。
他国文化に親しむのはよいが必ずしも五体投地で平伏しすぎなくてよいのです。
楽器の正しさに遊ばれるのでなく、楽器を遊んでいかないとね。


そんなん言ったらボロ号……のことは幾度も言ったか。
同じ話を幾度も幾度も済まないが、幾度だって言うちゃるけえ。

ちょっと待ってね今持ってきます、

これ。世田谷ボロ市で救出した、つまりはボロ、ガラクタのゴミだったわけよ?
正しい国際理解こそ正しい国際理解!資料保存を!と声高に模範姿勢を仰る日本国でよ?
ラーガだのターラだのホットヨーガだのマハーバーラたダの通ぶっておいて、
一方でこれ、リサイクルっちゅうか、粗大ゴミよ? なんで?なんで?

しょうがないから慌てて買い取って、せっかくだしスペシャルにしてやったさ。
全部バラして整えて、胴皮なんて猫皮を下手クソに ‘貼’ ってあったから、
丈夫なアフリカ山羊の皮を敢えて毛むくじゃらに‘張’って、
共鳴弦はフォークギターの重めの弦にしてペグも増築しました。

皮が厚めなのもあって音量はちょっと小さめですが、楽器の機嫌がよい日など、
太だるサワリ弦がビィャーーッズヮザザーーッと想定外に響くので、弾いてて楽しいです。

楽器にしてみれば、どなたかの御宅の異国情緒オブジェになってたかもしれないところ、
直せて弾ける人がたまたま東京に住んでて、たまたま売られてて、たまたま見つかって、
買われて歌を取り戻せてよかったねってどんだけたまたま確率論よって話。

ただ、そこまで自前でこなせていて、皆様おなじみ所謂インド努力ひけらかしライブの類、
音や金時チャージ3500円ドリンク別~やら、何とか寺講堂で世界ふれあい音楽会~やら、ようせんで、
あくまで日々の生活の中、神仏への祈りに少しばかり奏で、モノ達の歌を解放するのみ。


暮らしに楽器を遊んで、なにか問題でも?!
日本に眠るゴミ級品をこれは良いものだよと俺が評した途端、勿体無いって?
金とって見せびらコンサートしなきゃ価値が無いって仰る?
それとも褒めて褒めてコンクールに出て勲章ジャラジャラほど楽器に箔がつく?

まるでその態度、汚い要らないと無碍にされていた保健所の捨て犬をさ、
共に幸せなひとときを送れたらいいなって、俺の責任で里子に迎えてさ、
散歩がてらにフリスビー牧羊犬の素質を見出されて初めて血統書だの躾だのとヤイヤイ取り乱す、
おまんら自称正統民族楽器ィヤー諸兄の、トップブリーダー推奨ペディグリーバカじゃん。



 
や、もちろん何から何まで自分解釈でやっちまえとは申しませんけどもさ。
守・破・離、ひととおり学び、最低限の礼節を弁えて、初めて多少なり乱暴にもアジれるわけで。
基礎を身につけ自分流に至ったつもりでもまだまだ勉強不足なものだが、
お勉強ばかりで既存の域から出られず冒険できないのでは進歩が無いじゃないか。


敢えて酷い訴え方で煽るのは、だいぶ偏った現状に気付いて戴きたいからです。
そんくらいでないとクリエイティブという営為にまるで疎いし信じてくんないんだもん。
そこがこの営為の本質なのに、踏襲することばかりを大切にしてないか?

でなくたってサーランギーヤー各位、異国ならではの香りを届ける役割だのに、
俺のやりかた参考にしまくってんじゃんけ。一次ソースが見りゃすぐわかりますよ。
俺のは教わったやり方と俺独自のやり方を混ぜたものであるのに、
それを由緒正しいインド式取扱いのいち早い紹介にすぎないと思ってっから、
自分の方が早く知ってるし!と出典を明かさず披露するも、後々カンニング見ッかることになる。

よーするに、見本には則すが実力オンリーを装って見栄を張らないことには出来んってことよな。
サロンドサランギ展やってから慌ててサランギイベント組んでるようじゃ二番煎じだし、
知識だけ盗んでピースケ流だけ真似して全くやたら自己解釈メッタラで未熟丸出しもダサいやん。



有名無名、要不要に関わらず、楽器はクリエイションの塊だ。
世界の人々の様々な回答に感服するし俺もその一員でありたいと願う。
しかしいま作業の手を止めて遠巻きに眺めると、なんだろう、やっぱさ、

皆さん嬉々としてピュンピュン海外に出向いて珍しい民族音楽を紹介!なさるのはよいけど、
日本に溜まりゆくゴミ楽器にこうも目が向かないのどうしてなのよ。俺ばっかゴミ預かり係。

ほら、問題になってる、勝手に放流されて釣り味やサイズ競争を楽しんだあげく、
ポイと道端に捨てて行かれるブラックバスを見過ごすのと一緒じゃないかな。
もしかして、自分が釣り上げた魚じゃないとつまらないし手柄を自慢できない?
自分が異国文化の紹介者・架け橋を気取れないのなら実践の価値がない?
自分に魅力がないから ‘日本人がやってない’ 他国のコンテンツを手がけて自分を飾るのに必死?


なるほどその了見じゃ《サーランピー》の激ヤバ国産コンテンツを前に黙るしかないわな、
ここはブラックバスの大小どころか新種が次々釣れるプライベートビーチじゃけ、

この浜で投げ釣っとったら、知らん魚を楽しくて、そらぁのう、
褒められたい認められたい承認餓鬼の魚サイズ競争、そねえなもん賞賛しとれんのんじゃ。
誰もやってない世界の珍しい音楽を紹介してみせたい文化の架け橋さん、ご苦労さん。

 ・
 ・
 ・なんなのこのヒト…自己肯定感の塊マジキモ… 生理的に無理…
 ・
 ・

と、自称 “普通” に振る舞っては、自身の無能に向き合うのをひた隠しに避けるより、
ずっとカッケぇ生き方じゃないかと思うけどな。
簡単さ、隠れ家じゃなくてビーチを作ればいいんだよ心の中に。俺はそうしてる。

かくして今回のクソうざ説法の骨子はこうだ。

どんなに現地を正しく理解すべき!と威張ろうと、
現地のほうでは新種生物よろしく理解の範疇から逸れた変種が度々出るぞという視点、
作られればそれは有るわけだから傍観者は認めるしかないだろという視点、
各創作に対してやれ正統で正確な文化理解もヘッタクレもねえだろという視点、
だったら各々が心に自由な創造空間を持とうじゃないかという視点、
でもそんな大それたことは出来ないし…と先例を恐れ、
習ったとおりにしなくちゃ許されない…と権威に怯えるのは、
外来文化の過剰な神格化と低い自己肯定感の正当化でしかないぞという視点、
すなわち、遊ばれるな、遊べ! という視点の重要性だ。


おうよ、道具に遊ばれるな、道具を遊べ。ついては道具を作るとなお良い。
そんなものは存在しない!間違っている!と酷評されようが、
作りゃあるのだから、あるだろ、作りゃ。

覚えておいてください、この大切な概念を民族芸術分野では、

「アルダッロ・ツクーリァ」

と呼びます。…一度だって聞いたことねえですが。
アールヌーボーサグラダファミリアガダルカナルタカの語感でお洒落に親しみましょう。


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待たれよ次回は ‘凝’ の巻だ。記事は出来とるけど写真はこれからです。
民族楽器ィヤー各位には非ッ常に耳の痛い話になるから耳栓したまま読まれたし。









    サ ー ラ ン ギ ー 図 鑑     

★バイオリンは皆さんご存じのあの形状にほぼ定まっています。しかしサーランギーは製作者・時代・地方によって様々な自由形が存在し、今なお進化を続けています。特に弦数や配線は個体によって全くまちまち。これは、先人に学んでこう作らなければならない・本場の本家本元ではこれが正しい・こうでなければ本物の価値が無い、といった固定概念に縛られていないためです。ひとくちに捉えられないそれらをサーランピーでは「サーランギー属」と総称しています。

こうして並べますといかにもアジア諸国調査で得られた現地サンプルに見えますが、なんと殆どが日本国内で発掘されたものです。日本人の技術で修理を施しました。…そう言われると急に萎えますでしょう? みんな興味本位で取り寄せて結局すぐ手放しちゃうからこういうことになるのです。

しかもこの中には当方が捏造したオリジナル楽器をまことしやかにねじ込んであります。果たしてどれが現地の風薫る本家本物のお宝で、どれが世にもいかがわしい贋作か? 鑑定やいかに?…といったこだわりは、どうにでもなることですし、実のところどうでもよろしいことなのかもしれません。



チーペスト号  名古屋の誰だ号  結局ウチに号  

ボロ号  55号  黄泉号

グランピエ号 ジョギヤ 前方後円ジョギヤ 

カリマンタン号 恵さんでしたか号 そそるスリム号 

ドードゥロバナム ドゥカン号 サランガ

サランガ・ペタンコ エレクトリック チカーラー

チカーラー(近代版) サローズ アフガンサリンダ

ネパリ くさっぱら号 さらん弓(さらんきゅう)

サランダ  擦弦仮面 ダルマサンガ サランダ

ディルルバ エスラジ タール シェナイ

エスラマ ベラバハール カマイチャ

ラーヴァナハッタ ペナ エスラール
プールヴィーナ バリアジアン号 サラウドン
ストゥーパ号 ドドバシキメラ





    文 化 へ の 冒 涜 で は ?     


サーランギーの化石(カンブリア期)


いいえ、全く冒涜にはあたりません。サーランギー属は進化を歓迎し、地域毎に異なる展開を許す楽器群です

民族学・民俗学では、創作の混入は許されず、ありのままを正確にサンプリングすることで解明に努め、敬意を払います。つまり研究者はあくまで傍観者、せいぜい中途参加者であって、真の当事者にはなれません。研究者が自ら文化に手を加え、研究対象を自分自身とし、文化の歴史を塗り替える、これが許されるなら何だってやりたい放題になってしまいます。そのため研究者は、専門性・正確性への拘りにばかりにプライドを置き、しかし自分では大した表現が出来ない、融通の効かない方向へと人格形成されがちです。異文化理解を唱える本人が無理解とは皮肉なもの。サーランピーではこの状態を「スウェーデンポルノ女優のスリーサイズを精緻に暗記した童貞」と呼び、陥らぬよう自戒しています。

だども、オラ、この楽器がこの島でどう進化すんだか夢みちょる真ッ当事者の日本民族だで。何をどう作ろうと直そうとオラほの自由だ。オラが村の遊びがまんまこの楽器の進化の歴史になるだ。「インチキ業者」「思い上がるな」「現地の文化に失礼」「1人で騒いでるだけ」とお感じなのは、ひとえに貴方の心が許さないから。なにせその現地をはじめ世界各国からウチ宛てに「サイトを見た。修理はできるか? オリジナル楽器のオーダーは可能か?」と打診が来ます。もちろん断りますよ。てめーでやれっ。もしくはてめーの村の良さでやってみれっ。…そうすることがいつしか文化となるのだから。