>日本では西洋音楽教育を強制して来た悪影響ですね。
とのご感想。んーまあそりは確かにだいぶそうなんだろうし、
奥地のドジンが輪になってボンボコ的な世間の色眼鏡に悩む民族音楽ラヴァーも多いけど、
「西洋音楽は高尚で民族音楽が野蛮とは酷いステレオタイプなのですっ!!」
…と妙にドジン側の肩を持つのもまたステレオタイプだったりしねえかな、とも思うのね最近。
オーケストラの世界だって洗練の一方で相当スッ頓狂な試みの数々をやってきてるし、
バイオリンも出始めの時代はクソ嫌われた経緯がありましたからな。
俺、サーランギーを弾く前はコントラバスを5年くらいやってました。
サーランギーの弾き方はバラナシのカナイヤラル先生から教わったのですが、
ご指導の中でこういう愉快なエピソードがあったから聴いてくれい。
お稽古にとりあえず手持ちのコントラバス用の松脂を持って行ったの。
コントラバス用の松脂は、逞しい弦に弓毛がゴリッとかかるように、
他の擦弦楽器に比べてだいぶ柔らかめに精錬してあります。
夏の室内に置き忘れるとズベドベに溶けるくらい。
これをお試しのカナイヤラル先生、
「良くないな。柔らかすぎる。これは何用の松脂だ?」。
とっさにコントラバス用ですと答えると、
「あ? なんだって? なんだそれは」。
欧米や日本でポピュラーな巨大なバイオリンですと慌てて答えると、
「楽器店でサーランギー用の松脂を手に入れなさい」。
サーランギー用というのは売ってないと思うのでバイオリン用のを答えると、
「なぜ売っていないんだ?」。
だもので帰りにクロサワ楽器だかでバイオリンの松脂を買って次の稽古に持って行ったら、
「おう、これだよ。サーランギー用」とニッコリ。
いやはや、何事も勉強だなあ〜!って話。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
渋谷ハンズの限定企画『深海ラボカフェ』に寄り、
熱水噴出孔カレーなるものを戴く。
乾かしてカスカスになった蟹の死骸を追加トッピングすることができ、
+5カニ、+10カニ、+20カニと悪ふざけの度合いを選べるという酔狂な企画だ。
むろん調子に乗って20カニを選択、殻ごとバリバリと平らげて参ったのであるが、
それからが不安の半日間だった。
胃腸がドルンドルンと20カニ達の自由民権運動の如き様相で、
ほどなくして尻の噴出孔から硫黄臭ムンムンの熱き汚水を噴出するハメに。
ズドドド、ドュー… アッ〜!! さよなら僕の20カニ…
っはっはっは、消化に悪いんじゃねぇのかあのカレーは!?
みんなも気をつけろ どうぞお試しあれ!
というかカニを殻ごと20頭もバカみたいに食ったこちらに責任あるんだけどね。
深海生物を模した商品販売やイベントも盛況で、
とりわけ作家の手による歪んだ愛に溢れた雑貨群は、
一般流通品が陥りがちな “売れない” 怯えからくる大衆への下品なすり寄りが無く、
眺めていて気持ちが良い。
異界からの奇怪な便りを、机上や懐で愉しめる創作へ転生し、そして魅せることで、
関わる皆が深淵への憧れを共有できる博物学の現場。うーむこれこそまさにラボカフェ冥利。
素材量販店がこういう視点を持ってくれるのってありがたいよな、いいセン突いてる。
ただ、生物型グッズ群には一抹の物足りなさも覚えます。
フィギュアやぬいぐるみなら所有し飾ること自体で成立するからいいが、
グソクムシ型のスマートフォンケースや、ダイオウイカ型の背中掻き棒のような、
特に意味はありませんが生物型にしてみましたどうです突飛でしょう押しというか、
「その生物を我々の日常生活へ採り込んだ所にどんな意味性があるか」
の説得力に欠けるがために、いちおう手に取るけどア〜ン惜しい! やっぱ要らない、
って感じる商品がちょいちょい存在するのだ。
その生き物の、その形、その習性だからこそ、人間社会にこんな非日常が立ち現れます…
という提案まで昇華できたら素晴らしいアートになるはずなんだ。
いかんせんもうひといきなんだよな。
文句言うからには当然、じゃあお前はどうなんだ。
具体的なアイデア幾つか溜まってきたからそろそろ形にしてみようかな、海洋生物テーマの作品。
しかしながら売るつもりはない。あまり量産すると良さが薄れるからな、ほっケースみたいに。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
虫愛づる姫君と連れ酒酌み交わしけるに、
くそ狸、酔ひ酔ひて、やれ渋谷土産をば奉らむとて、
海の市にて得し飯器の敷紙渡しければ、
姫、置かれよ、己が足にて行きて己が手にて取らむとぞ突き返しける。
されこそ、いと心にくし姫君と笑ひぬめり。
二の巻にあるべし。