◆ インド発祥の多弦胡弓「サーランギー(Sarangi)」類の話題を中心に、世界でここだけ前代未聞の怪研究・珍開発の数々を発信し続ける異常ブログです。同楽器取扱いの急先鋒にして生物学者や変態ケモナーとしても知られる異常造形作家【川崎ピースケが執筆運営しています。
研究テーマ:1)楽器「サーランギー属」、2)海のダンゴムシの仲間「水産等脚目甲殻類」、3)多肉・塊根・平行、栽培から造花まで「珍奇植物」、4)原材料・愛玩対象としての「羊」 、5)獣人表現「ケモナー」 、等を題材としたデザイン論と実践、特に生物型や生物利用の意味について。議題は多岐に渡り、追究の範疇としてエログロを含みます。* 近年(2)〜(5)の構想がだいぶ具現化したので、2023年から(1)の分野に戻りアプローチを再開できる運びとなりました。
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「こつぶ小テスト」の答え合わせと解説


第2回『博物ふぇすてぃばる!』お疲れさまでした〜!

参加の楽しい記録はまた後日として、まずはご来場者さんとの約束、
会場で配布した「落第!こつぶ小テスト」の正解&解説を掲載いたします。

そうそう、全問正解した先着50名が貰える「こつぶプチ標本」ですが、
な〜んと50個すべて持ってかれちゃいました。チクショーーっ!!!!

果たしてどんな問題が突きつけられ、そして50人に突破されたのか?!
テストに答えてくださった方はもちろん、来れなかった方もどうぞご覧ください。




【問題1】

広島県沖のホボロ島に大量発生し、柔らかな岩石(に含まれるバクテリア)を食物とするため、島を崩して陸地を海に沈める現象をひきおこし、景観を壊している大害虫は、〈 a 〉〜〈 c 〉のうちどれですか。

〈 a 〉イワホリコツブムシ
〈 b 〉ヨツバコツブムシ
〈 c 〉ナナツバコツブムシ

→《模範解答》
広島県ホボロ島を構成する大変もろい岩石 (※デイサイト質 溶結結晶凝灰岩とのこと) に、〈 c 〉のナナツバコツブムシが穴をあけて数多く住んでいるのは事実です。しかし彼らはあくまで自身が入れる最低限のサイズの穴=住居を製作しているものであり、石を体内に採り込んではいません。

従って、得体の知れない「大害虫」が硬い岩石を「食物」にしていたずらにガツガツ齧り潰すニュアンス、言うなれば「近所の公園に気持ち悪いケムシ大発生キャ〜」「ウチの畑が全部ムシにやられた畜生〜」 といった侵略的印象とは異なるため、研究や広報においては拡大解釈に陥らぬよう注意する必要があります。

しかし実際メディアでは、センセーショナルでドラマティックな話題を届ける必要性からか、“虫に食い荒らされて島が消える” といった語句が好んで用いられた&用いられているようで、これでは短絡的な誤解を招きかねません。

▶︎日本地質学会 - 地質フォト:ホボロ島の生物浸食作用
 http://www.geosociety.jp/faq/content0012.html

▶︎『虫に食いつぶされていく島・・・ホボロ島・・・』[呉・海田・安浦]のブログ・旅行記 by Elliot-7さん
 http://4travel.jp/travelogue/10278186

▶︎広島大学総合博物館公開講演会『島がなくなる-ナナツバコツブムシ、生物浸食作用-』
 http://www.hiroshima-u.ac.jp/news/show/id/2743

▶︎UMAファン 〜 未確認動物ナナツバコツブムシ
 http://umafan.blog72.fc2.com/blog-entry-505.html
 
UMA的ロマンを煽るためか、このページは特に客観性を欠いています。「暴れ放題といった感じ」の根拠は何なんだっつの。

広島大の長沼毅先生によると、広島名産カキ養殖業の現場において、島の石に穴をあけるぐらいだからカキに穴をあけるのも奴らの仕業だろうという誤認があるとのことです(私信)。川崎はナナツバコツブムシも「こつぶ荘」に反応する実験結果を得ており、飼育実験をとおしてナナツバコツブムシの真実を突き止めようとしています。

…ということで【問題1】の正解は、

「問題がおかしい」。

〈 a 〉も〈 b 〉も〈 c 〉もバツ…そんなのわかるかっ!!

[[]]


【問題2】

シリケンウミセミは、オス成体がおしりに剣のような鋭い突起をもつことから、その名が与えられました。シリケンウミセミのおしりの剣のようすを最もよく表している図は、〈 d 〉~〈 g 〉のうちどれですか。

→《模範解答》
では、シリケンウミセミの実際の標本をお見せしましょう。


このとおり、背面から後方に向かう突起物があるのがわかりま……背面?

そこ、背中じゃね?!  いや尻か?!

尻っちゃ尻ですけど… 尻っていうか… 尻じゃねーし!!

ということでシリケンウミセミの尻を図に表すなら、こう↓でなくてはなりません。

つまり【問題2】は、

「問題がおかしい」

〈 d 〉〈 e 〉〈 f 〉〈 g 〉全てバツです。…ふざけろ〜!!

なお〈 d 〉はツツオウミセミ〈 e 〉はニホンコツブムシ、
〈 f 〉はイワホリコツブムシを表しています。

そして〈 g 〉。こりゃ全く架空の生物です。
尻の剣ったら普通〈 g 〉だろうがよって? ごめんこれボクが考えた怪獣なの。 






【問題3】

コツブムシとウミセミの見分けかたについて正しく述べているのは、〈 h 〉~〈 k 〉のうちどれですか。

〈 h 〉いじめると丸くなるのがコツブムシ、ならないのがウミセミ
〈 i 〉自分で巣穴を掘るのがコツブムシ、掘らないのがウミセミ
〈 j 〉養殖カキを食べてしまうのがウミセミ、無害なのがコツブムシ。
〈 k 〉ごく小さな音量で鳴くのがウミセミ、鳴かないのがコツブムシ。

→《模範解答》
コツブムシもウミセミも丸くなりますので〈 h 〉は誤りです。イソコツブムシやニホンコツブムシは穴を掘りませんので〈 i 〉は誤りです。出来合いの穴に隠れることはよくあります。

〈 j 〉はきわどい選択肢で、大切な養殖ホタテ稚貝を食べてしまう「ウミセミ」の防護策についての報告書があるのですが、

▶︎青森県産総合研究センター増養殖研究所第102号 
 吉田達『ホタテガイ付着 稚貝の敵「ウミセミ」の謎にせまる』
 http://www.aomori-itc.or.jp/public/zoshoku/dayori/102g/102_p02_04.pdf

ここでの「ウミセミ」はあくまで通称で、分類学上はニホンコツブムシ。このように既に混同があるわけです。でも、コツブやウミセミの善悪をいちいち確認しろだなんて、たくましい海の仕事人たちに言えないし、やってられないもんな。これは上記【問題1】の解説に書きました養殖カキ業の事例にも重なってきます。


そして〈 k 〉ですが、まさか鳴くわけないでしょう?
私もたいへん驚いてひっくり返ったのですが、近年、広橋教貴先生・中町健先生によって
「ニホンコツブムシが鳴く」という報告が為されました。これはコツブ界の大快挙!! 背中の鎧を擦り合わせてギッギッギと発音するのだそうです。

▶︎日本動物学会第84回岡山大会(2013)動物学ひろば要旨集
 広橋教貴、中町健『鳴く不思議 ニホンコツブムシ』
 http://www.zoology.or.jp/annual-meeting/2/img/f_users/r_1005633img20130807120706.pdf 

中町さんは今ブームのグソクよりもコツブムシ類を有名にすることが目標とか。ガンバレ〜〜っ!!  なおウミセミが鳴くという報告はまだ無いようですが、可能性はある。セミなんだから鳴けば楽しいのにね。

ということで【問題3】も、

「問題がおかしい」

〈 h 〉も〈 i 〉も〈 j 〉も〈 k 〉も誤りだということになります。







い…

いいかげんにしろ〜っ!!

▲「このウミセミ野郎!!」「コツブ詐欺だ!!」「ピースケを吊るせ!!」と、騒然の博物ふぇす 



じゃあいったい、どこを見て、ウミセミとコツブムシを正しく見分けるのか。

布村昇先生の著述によると…

▪️保育社『原色検索日本海岸動物図鑑』〈2〉(1995)より

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「次のように3亜科に分類される。しかし、この分類が真の系統関係を反映しているかどうかは疑問である。

第4・第5腹肢には横向きのしわを欠く
 ……シオムシ亜科(Cassidininae)

第4・第5腹肢には内肢にのみ横向きのしわがある
 ……コツブムシ亜科(Sphaeromatidae)

第4・第5腹肢には内・外両肢ともに横向きのしわがある
 ……ウミセミ亜科(Dynameninae)


 ↓
20年後  
 ↓

▪️黒潮生物研究財団 『Kuroshio Biosphere』 volume 11(2015)内、
「四国産等脚目甲殻類より

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

第4・第5腹肢の内肢・外肢とも肥厚しない
 ……ヒダナシウミセミ亜科(Cassidininae)

第4・第5腹肢の内肢は肥厚するが外肢は肥厚しない
 ……コツブムシ亜科(Sphaeromatidae)

第4・第5腹肢の内肢・外肢ともに肥厚する
 ……ウミセミ亜科(Dynameninae)

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「ヒダナシウミセミ亜科(新称)Cassidininae : 従来本亜科の和名は『シオムシ亜科』と呼ばれていたが、日本ではその名を基に命名されたシオムシ属TecticepsがTecticipcinae亜科に移され(独立したシオムシ科Tecticipidaeとされたこともあった)ので、Cassidininaeに『シオムシ亜科』という名称があたえられていることは混乱を招くおそれがあると思われるため、この和名を廃すべきと思われる。本亜科の新しい和名として、第4・第5腹肢を含め、全腹肢に襞がないことから新たに本亜科に『ヒダナシウミセミ亜科』という和名を提唱する」

 ↑ 原文に誤記、「Tecticipcinae」→ 正「Tecticipitinae」

…ふむふむ。ってことは釧路港に大発生する可愛い「シオムシ」っていうのがいるんだけどアイツらがコツブorウミセミ議論から外れたということなのか。知らなかったわいや〜。まあいいや、えーと、↑といった具合に、
ベテランの先生をも翻弄する事態がコツブ界隈には巻き起こっている。

博物ふぇすてぃばる!のお友達の為に、もンのすごく噛み砕いて説明すると…



コツブムシやウミセミをひっくり返すと、


脚の後ろにピラピラがいっぱいついてます。

これを腹肢(ふくし)といい、このピラピラで呼吸し、パタパタ動かして泳いでいます。で、所定の位置を1枚ピッと取って、その厚さとシワの有無を顕微鏡で観察することにより、コツブムシとするべきかウミセミとするべきかを判断しています。

より理解しやすく、語弊を恐れずに例えるならば、

コツブムシかウミセミかは、スカートをめくり、パンツで判断します。
白パンツかな、縞パンツかな、それとも、あったかパンツかなぁ?
あっはっはっはっはっは!

…とほほ、そんなの磯遊びのぼくらには確かめられないよ〜。

今後、遺伝子の解析が進めば、布村先生の仰る “ 真の系統関係 ” が明らかになっていくでしょうし、ひょっとしたらもっとわかりやすい見分け方が発見されるかもしれない。この辺は分類学の先生のご活躍を待ちましょうぜ。




【こつぶ小テストのねらい】===============


 「こつぶ小テスト」は全て問題がおかしく、選択肢の中に正解がありません。その本意は『専門家も右往左往しているコツブムシ研究の混乱ぶり』のプチご体験にあります。マニアックな専門知識を上から目線でぶつけて悦に浸るような意図は一切ありませんでした。そもそも私は木工芸の、しかも在野(無所属)の研究者で、門外漢も甚だしい身分です。

 門外漢なりに、海でみつけた可愛い動物たちについて知りたいそして愛したいと思った時、もちろん図鑑や資料、昨今ならインターネットを頼りに情報を収集してきたわけですが、いったい幾度「うわあ載ってないじゃん」「いやそれ間違ってるし」「いつそういうことになった?」と作業机を叩きましたことか。「こつぶ小テスト」の意地悪は全くそのまま、私自身がこれまで体験したショックや困惑を反映したものです。

 さらなる意地悪で本当に申し訳ない「テストに全問正解したら賞品を」という形式は、一種のフィルターを表現しています。パッと見だけでも全問正解なんて無理そうな内容ですのに、それでも敢えて興味を持ってご参加くださり、頑張ってご解答くださった50名様全員に、早々に種明かしをしてお詫びの特製「こつぶ荘プチ標本」を差し上げています。最初からそのつもりでした。どうせ解けないからと諦めたり、無知をさらけ出すのが恥ずかしいからやらなかった大先生は、ハナっから貰えない仕組みです。問題用紙は100枚刷って配りきりましたから…

 浅見な私の申し上げるところではないのですが、博物学もまた、扉を開けてみないと分からない世界です。覗いてみて、一歩踏み出して、ズッコケながらだけど、その先にはたいてい楽しい驚きが用意されている。これはいわば母なる地球が用意した「意地悪テスト」。地球はわりあい頻繁に、扉を僕らの前に出現させるのですが、その扉を開けない人に対しては景品をくれない態度を貫きます。で、ちょっとだけ覗くつもりだった誰かが入ると、鍵をかけて後戻りできなくするんですよ。意地悪だからな地球って奴は。

 私の場合、たまたま開けたのがコツブムシの待合室の扉だったわけです。みなさんもどうぞこちらへ。壷の中のクリームを顔や手足にすっかり塗ってください。耳にもよく塗りましたか。



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次回は博物ふぇすてぃばる参加の思い出と一人反省会を載せます。
さらん儀蜚°助流はその後な。








    サ ー ラ ン ギ ー 図 鑑     

★バイオリンは皆さんご存じのあの形状にほぼ定まっています。しかしサーランギーは製作者・時代・地方によって様々な自由形が存在し、今なお進化を続けています。特に弦数や配線は個体によって全くまちまち。これは、先人に学んでこう作らなければならない・本場の本家本元ではこれが正しい・こうでなければ本物の価値が無い、といった固定概念に縛られていないためです。ひとくちに捉えられないそれらをサーランピーでは「サーランギー属」と総称しています。

こうして並べますといかにもアジア諸国調査で得られた現地サンプルに見えますが、なんと殆どが日本国内で発掘されたものです。日本人の技術で修理を施しました。…そう言われると急に萎えますでしょう? みんな興味本位で取り寄せて結局すぐ手放しちゃうからこういうことになるのです。

しかもこの中には当方が捏造したオリジナル楽器をまことしやかにねじ込んであります。果たしてどれが現地の風薫る本家本物のお宝で、どれが世にもいかがわしい贋作か? 鑑定やいかに?…といったこだわりは、どうにでもなることですし、実のところどうでもよろしいことなのかもしれません。



チーペスト号  名古屋の誰だ号  結局ウチに号  

ボロ号  55号  黄泉号

グランピエ号 ジョギヤ 前方後円ジョギヤ 

カリマンタン号 恵さんでしたか号 そそるスリム号 

ドードゥロバナム ドゥカン号 サランガ

サランガ・ペタンコ エレクトリック チカーラー

チカーラー(近代版) サローズ アフガンサリンダ

ネパリ くさっぱら号 さらん弓(さらんきゅう)

サランダ  擦弦仮面 ダルマサンガ サランダ

ディルルバ エスラジ タール シェナイ

エスラマ ベラバハール カマイチャ

ラーヴァナハッタ ペナ エスラール
プールヴィーナ バリアジアン号 サラウドン
ストゥーパ号 ドドバシキメラ





    文 化 へ の 冒 涜 で は ?     


サーランギーの化石(カンブリア期)


いいえ、全く冒涜にはあたりません。サーランギー属は進化を歓迎し、地域毎に異なる展開を許す楽器群です

民族学・民俗学では、創作の混入は許されず、ありのままを正確にサンプリングすることで解明に努め、敬意を払います。つまり研究者はあくまで傍観者、せいぜい中途参加者であって、真の当事者にはなれません。研究者が自ら文化に手を加え、研究対象を自分自身とし、文化の歴史を塗り替える、これが許されるなら何だってやりたい放題になってしまいます。そのため研究者は、専門性・正確性への拘りにばかりにプライドを置き、しかし自分では大した表現が出来ない、融通の効かない方向へと人格形成されがちです。異文化理解を唱える本人が無理解とは皮肉なもの。サーランピーではこの状態を「スウェーデンポルノ女優のスリーサイズを精緻に暗記した童貞」と呼び、陥らぬよう自戒しています。

だども、オラ、この楽器がこの島でどう進化すんだか夢みちょる真ッ当事者の日本民族だで。何をどう作ろうと直そうとオラほの自由だ。オラが村の遊びがまんまこの楽器の進化の歴史になるだ。「インチキ業者」「思い上がるな」「現地の文化に失礼」「1人で騒いでるだけ」とお感じなのは、ひとえに貴方の心が許さないから。なにせその現地をはじめ世界各国からウチ宛てに「サイトを見た。修理はできるか? オリジナル楽器のオーダーは可能か?」と打診が来ます。もちろん断りますよ。てめーでやれっ。もしくはてめーの村の良さでやってみれっ。…そうすることがいつしか文化となるのだから。