◆ インド発祥の多弦胡弓「サーランギー(Sarangi)」類の話題を中心に、世界でここだけ前代未聞の怪研究・珍開発の数々を発信し続ける異常ブログです。同楽器取扱いの急先鋒にして生物学者や変態ケモナーとしても知られる異常造形作家【川崎ピースケが執筆運営しています。
研究テーマ:1)楽器「サーランギー属」、2)海のダンゴムシの仲間「水産等脚目甲殻類」、3)多肉・塊根・平行、栽培から造花まで「珍奇植物」、4)原材料・愛玩対象としての「羊」 、5)獣人表現「ケモナー」 、等を題材としたデザイン論と実践、特に生物型や生物利用の意味について。議題は多岐に渡り、追究の範疇としてエログロを含みます。* 近年(2)〜(5)の構想がだいぶ具現化したので、2023年から(1)の分野に戻りアプローチを再開できる運びとなりました。
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【取り急ぎ】オーストラリアの海辺で青年が「ウミノミ」に足を食われて血まみれ事故案件について、ご質問へのお応えと所感


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>詳しい方が博物フェステバルに出られていたと聞きまして、(中略)
そこで伺いますが、ウミノミは日本にもいますか?
神津島に行くので子供がたべられては心配で、
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…ウミノミが人を食う?!
そりゃ聞いたこともないと驚きつつ、ご紹介のニュースを拝見しました。

(CNN.co.jpより)
https://www.cnn.co.jp/fringe/35105468.html


ははぁ〜(感心)、ほほぉ〜(感嘆)、こりゃあ素晴らしい!
この類でしたらば拙者、
日本一か二か三か四の生態研究者でござる。


…とか言って大間違いすっかもしらんから大きな口は叩けないですけど、
俺これ、犯人、違うと思う。もっと精査した方がいいんじゃないかしら。
ひょっとすると外国にそういう悪さをする「ウミノミ」がいるかもしれませんし、
私自身がオーストラリアで噛まれてきたわけではないので憶測になりますが、
ニュースを読みました限り、鵜呑みにしづらいな…というのが正直な感想です。

凄く遠回しにお伝えせざるを得ないのですが、よろしいですか?


1)「ウミノミ」という呼び名について

「標準和名」と「通称」を間違えないようにしたいね、というお話。 
お祭りに行くとカメすくいの屋台が出ますでしょ、あのミドリガメは、
ミシシッピアカミミガメという日本での正しい呼び名が決まっています。
博士たちは正式な名前で呼べと怒るけれど、本来どう呼ぼうと呼びたい人の自由。

しかし呼び間違いが原因で勘違いが生まれるようでは問題です。
全く関係のない生物に濡れ衣を着せてしまうことになる。


海の虫には「端脚目(たんきゃくもく)」と呼ばれるグループがあって、
目立つのはヨコエビやワレカラという者たちですが、この中にウミノミがいます。
しかしウミノミはもっと沖をプカプカ或いはクラゲの肩に乗って暮らしている類で、
波打ち際にたむろして肉食するというのは聞いたことがないし、考えづらい気がします。

まずその意味で、この事故はウミノミの仕業とはいえないだろうなあ。
海で酷くやられたから「SEA FLEA」に違いないとオーストラリア人が判断し、
これを日本人が直訳して海のノミ = ウミノミと書いた
のではないでしょうか。

一般には「キモ虫がナニ類だろうと興味ない、けど噛むなら怖い!!」くらいの認識でも、
エビカニ博士は「デマを流すな、ウミノミではない!!」と怒るんじゃないかと思います。



2)添付の映像について

このビデオが足を齧った犯人の「ウミノミ」だというのなら、

うーん、この子らじゃないと思う…。こりゃヨコエビやんけ。

ヨコエビ同定ほとんど分かんないんですけど、顔かたち、泳ぎ方、
見たことあるののうちではナミノリソコエビという種に近い感じを抱きました。
実際ナミノリは日本沿岸の波打ち際から浅瀬にたくさん住んでいます。
もう少し陸でピョンピョン跳ねるのもいますがあちらはハマトビムシといって、
あれはまた別のヨコエビの仲間です。なのに水中が苦手(それは苦しい)。

ただ、外国とはいえそんな獰猛なヨコエビいたもんかなあ?と疑います。
だっておとなしい子ばかりですもの、いたらむしろ新発見だけどなあ。
映像のヨコエビは噛まれた青年のお父さんが生肉をエサに採ったそうですが、
だからってこれが犯人と言い切れる?よく確かめた?の疑義が必要ですね。
第一この映像、たかっちゃいるけどガツガツ噛み付いてねえじゃんか。


→【追記】「ナミノリソコエビとするには無理があるのじゃ」とのご指摘を自称ヨコエビ博士(論文実績のない民間の方)より頂戴しました。えーと有り難いのですが、そこ今どうでもいいんだよ。現物の標本を見て断言したわけじゃないし、俺そもそもヨコエビ類の仕業じゃないのでは?と言ってるんで、そちらの論旨の方がよっぽど重要ですから、申し訳ありませんがヨコエビの正確な分類なんか二の次・三の次の話です。


では、3)真犯人は誰だというのか?

以下、私の飼育経験から推測できることを申し述べます。
(※ネットに流すのは初の情報だから、全国の物知り博士たちよ、
 自分の物知りのつもりで知ったかぶろうとしても駄目だかんね。)

確かに波打ち際のヨコエビは死んだ魚などの漂着肉を食べて暮らしてますが、
表面を少しずつモグモグという感じの食べ方で、そうグイグイ齧ってはいかないです。
さらに重要なことは、ヨコエビはどこか掴まる所があると安心するということ。
石、海藻、漂着ゴミ、食べられる物体ならなおラッキーの一石二鳥でしがみつきます。

従ってヨコエビならお父さんのやり方でよく採れるはずですが、
これだけではもっと厄介な “奴ら” を捕獲することが難しい。
…いるんです他にも肉食い生物が。


日本ではナミノリソコエビらとしばしば同所的に、
むちゃくちゃ高速で泳ぐダンゴムシの仲間『ヒメスナホリムシ』がウジャウジャいて、

これも漂着肉を食べますが、採ってきて注意深く飼育してみたところ、
好みや行動がヨコエビらと大きく違うことわかりました。

ヒメスナホリムシは、死後すぐや瀕死の動物の肉を好んで食す傾向があり(川崎知見)
おそらくその習性がゆえに時おり海水浴客をカリリと噛むのです。
死んで時間の経った肉、ブヨブヨの死肉は、せっかく与えてもあんまし喜びません。
なのでスーパーの刺身も食べますが反応はそこそこ、解凍品はなお鈍かったかな。

それよりも捌きたての魚、殺したてのイソエビ、潰したてのコオロギには、
真っ先にスッ飛んで来て大喜びで肉体に食い込み、大勢でたちまちボロボロにします。
水槽に数滴たらした私の血液にもはしゃぎ回りましたので、
おそらく新鮮な体液の匂いを感じて判断しているのではないかと思います。

さらにヒメスナホリムシは、短時間でガツガツ食ってサッサと帰るんですね。
充分食べるとしばらくピタッと動かなくなって、水底に沈んで仰向けで休むの。
私はこれを「食った食った行動」と呼んでいます。そういう人いますでしょ?

高速で移動し生肉に多数で襲いかかっては一目散に逃げる術を持ち、
ヨコエビのようにいつまでも肉にしがみついていないうえ水から出すと逃げる、
そんな極悪カジリ虫を、お父さんのやり方で採れるでしょうか? 無理じゃないかな。

以上のポイントに加え、夜中に短時間でやられた状況、傷口の形状から考えて、
本件の犯人はウミノミでも、言われているヨコエビでもなく、
オーストラリア産の鮮肉食性スナホリムシが主犯格ではないか?
というのが私の予想です。
発端にスナホリが特攻すれば、その傷口にはヨコエビもたかるだろうし。

もちろん日本産の事例とは差異があるはずですから断言はできませんが、
似た食性のあるスナホリムシはオーストラリアの沿岸にもたぶんいます。
ですので真相は現地からの追加情報を待ちましょう。
実際にこの目で確かめて、できれば齧られてみたいものですね〜。



なので頂戴しましたご質問への答えは、

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神津島「ウミノミ」という名のムシに噛まれる心配は不要です
 インターネットは不確かな情報がまことしやかに伝わるのでご注意くださいませ。
 甲殻類の研究は難しく、博物館でも間違うことがあります。

・ただし「ヒメスナホリムシ」にはガッツリ噛まれるかもしれません。
 噛まれないコツは海の中でジッとしないことです。
 ジッとしていると、ごちそう発見!と勇んで噛んできます。

・砂浜をピョンピョン跳ねてるのは噛まない別のムシなので怖がらなくて大丈夫。

・夏休みの自由研究にされてはいかがでしょうか。
 蚊にポツポツ足を刺されたらわざと搔き壊して血を流し、
 そのまま夜の波打ち際に入ってしばらくジッとたたずんでみてください。

 素晴らしい実験結果を得て、先生に褒めてもらえるかもしれません。

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といったところでしょうか。あまり神経質にご心配なさらず、
満点の自然をどうぞご満喫くださいませ。台風がちょっと心配ですね。







〜〜【追記】〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

有言実行、この研究を進めて執筆した論文が学術誌に載りました。
saran-p.hatenablog.com
興味ある人はお読み戴き、その足でオーストラリアに噛まれに渡ったらよろしい。







    サ ー ラ ン ギ ー 図 鑑     

★バイオリンは皆さんご存じのあの形状にほぼ定まっています。しかしサーランギーは製作者・時代・地方によって様々な自由形が存在し、今なお進化を続けています。特に弦数や配線は個体によって全くまちまち。これは、先人に学んでこう作らなければならない・本場の本家本元ではこれが正しい・こうでなければ本物の価値が無い、といった固定概念に縛られていないためです。ひとくちに捉えられないそれらをサーランピーでは「サーランギー属」と総称しています。

こうして並べますといかにもアジア諸国調査で得られた現地サンプルに見えますが、なんと殆どが日本国内で発掘されたものです。日本人の技術で修理を施しました。…そう言われると急に萎えますでしょう? みんな興味本位で取り寄せて結局すぐ手放しちゃうからこういうことになるのです。

しかもこの中には当方が捏造したオリジナル楽器をまことしやかにねじ込んであります。果たしてどれが現地の風薫る本家本物のお宝で、どれが世にもいかがわしい贋作か? 鑑定やいかに?…といったこだわりは、どうにでもなることですし、実のところどうでもよろしいことなのかもしれません。



チーペスト号  名古屋の誰だ号  結局ウチに号  

ボロ号  55号  黄泉号

グランピエ号 ジョギヤ 前方後円ジョギヤ 

カリマンタン号 恵さんでしたか号 そそるスリム号 

ドードゥロバナム ドゥカン号 サランガ

サランガ・ペタンコ エレクトリック チカーラー

チカーラー(近代版) サローズ アフガンサリンダ

ネパリ くさっぱら号 さらん弓(さらんきゅう)

サランダ  擦弦仮面 ダルマサンガ サランダ

ディルルバ エスラジ タール シェナイ

エスラマ ベラバハール カマイチャ

ラーヴァナハッタ ペナ エスラール
プールヴィーナ バリアジアン号 サラウドン
ストゥーパ号 ドドバシキメラ





    文 化 へ の 冒 涜 で は ?     


サーランギーの化石(カンブリア期)


いいえ、全く冒涜にはあたりません。サーランギー属は進化を歓迎し、地域毎に異なる展開を許す楽器群です

民族学・民俗学では、創作の混入は許されず、ありのままを正確にサンプリングすることで解明に努め、敬意を払います。つまり研究者はあくまで傍観者、せいぜい中途参加者であって、真の当事者にはなれません。研究者が自ら文化に手を加え、研究対象を自分自身とし、文化の歴史を塗り替える、これが許されるなら何だってやりたい放題になってしまいます。そのため研究者は、専門性・正確性への拘りにばかりにプライドを置き、しかし自分では大した表現が出来ない、融通の効かない方向へと人格形成されがちです。異文化理解を唱える本人が無理解とは皮肉なもの。サーランピーではこの状態を「スウェーデンポルノ女優のスリーサイズを精緻に暗記した童貞」と呼び、陥らぬよう自戒しています。

だども、オラ、この楽器がこの島でどう進化すんだか夢みちょる真ッ当事者の日本民族だで。何をどう作ろうと直そうとオラほの自由だ。オラが村の遊びがまんまこの楽器の進化の歴史になるだ。「インチキ業者」「思い上がるな」「現地の文化に失礼」「1人で騒いでるだけ」とお感じなのは、ひとえに貴方の心が許さないから。なにせその現地をはじめ世界各国からウチ宛てに「サイトを見た。修理はできるか? オリジナル楽器のオーダーは可能か?」と打診が来ます。もちろん断りますよ。てめーでやれっ。もしくはてめーの村の良さでやってみれっ。…そうすることがいつしか文化となるのだから。